わずかな光とかすかな閃きを糧に今日もフラフラ漂う「穂葉」の思いつき小説もどき格納庫です。


by hoba-rhapsody
当ブログの目録です。尚、注意事項や最新の更新に関しては左のメモ帳にも記載しています。
前書き(初めての方へ)
*小説もどき
夜に思いを 1/25 
「ある晴れた日に 傘を差して 手を伸ばして」 2/28
「清算」3/31 New

予定してた3題話が完成しなかったので、別の作品で代用しましたとさ。
うーん。なかなかうまくいかないですね。(次回更新:4月中旬以降予定)
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# by hoba-rhapsody | 2010-03-31 23:52 | もくじ

「清算」

「…寄る年波には勝てないな」
白髪まじりのぼさぼさ髪に、色落ちしてヨレヨレのジャンパーを着崩した初老の男。
鏡の向こうに、見知った顔をした自分を見て、川村はそうぼやいた。
川村はそうぼやいても仕方ない年齢だった。40を越えれば誰しも昔のままとはいかない。どうしたって肌のハリやツヤは落ちるし、白髪だって増える。身体の自由も効かなくなっていく。
いつまでも若いころのままでいられない。でもそれは必ずしも短所ではない。
若いからできる服装がある一方で、年をとってから映える服がある。

だが彼には、あえて自分を若く見せる必要があった。それは…


その日最後の来客は、麗華が店じまいを始めようかと考え始めた頃だった。

ラストオーダーには1時間あるが、最近は不況の影響かめっきり客足が遠のいていた。
そんなときにきたのが、その男だった。
「あ。いらっしゃいませ―」
言ってから、どこかで見た事があるような気がして、麗華は思わずじっとその男を見つめた。
扉を押しあけて入ってきたのは、実直そうな男だった。
真新しそうなスーツの上下に、ネクタイをきっちりと締めている。
どこかで会った事がある気がするが、記憶に靄がかかったようでよくわからない。けれど、どこか懐かしい雰囲気を感じる男だった。

「っと。どこに座ればいいかね」

遠慮がちに店内を見渡して、男が言った。

「おひとり様ですね?どちらでもご自由にどうぞ」

繁盛していればカウンター席と言う所だが、全席空席の時は正直どこに座っても問題ない。

「そうか…あ、そうですか。では、じゃあ…ここで」

男は、そう言って板張りのフロアを歩いて、カウンター席に近いテーブル席へと向かった。
カウンターの向こうには誰もいない調理場が見える。

麗華は、男が礼儀正しく椅子を引いて腰掛けるのを眺めていた。彼はメニュー表を開いて何を食べるのか考えているらしく、麗華の視線を気にしていなかった。
どこかであった気がする。けれど、覚えている彼の姿と目の前の男は一致しない。どこで、いつあったんだろう…?

「ねぇ」思わず麗華は言った。「あなた…以前会った事がありますか?」

すると、メニュー表から目線を外さずに、
「そうですね。それを、私も、考えていたところです」と男は言った。
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# by hoba-rhapsody | 2010-03-31 23:46 | SS格納庫

冬にしては、暖かな日が続いてた。まるで水で薄めて滲んだ墨汁のような色をした、一面の曇り空で、その雲のわずかな隙間から、途切れ途切れに差し込む日差しは弱く、太陽の熱の恩恵は無い。それでも寒さをあまり感じないのは、風が吹いていないからだろう。

その日は土曜日で休日だったが、私は昼頃に学校へと向かった。学校へは、自転車で行く。
10分程度の道中は一面田んぼと道路が広がっており、見るべきものも寄る場所もない。無趣味無所属の学生である私が休日に学校へいくのは稀なケースで、滅多にない。今日がそれで、忘れ物を取りに行く必要があった。

とりたてて何事もなく、校舎へとたどりついた。自転車をスタンドでその場に固定し、教室へと向かった。ドアが開いており、中で物音がした。

そこには彼女が、自分の席について、所在なさげにボールペンを手で弄んでいた。窓の向こうでは、太陽が分厚い雲に遮られ見えなりつつある。他に人はいない。

彼女は唐突に、眠そうな、気の抜けた様子のまま言った。

「あー何か面白い事ないかなぁ」

私はそれには答えず、ゆっくりと窓際の自分の席に向かう。彼女とは面識が無かったし、とりたてて答える必要も感じなかったからだ。

「世の中うまくいかないものね。寒いし。面白くない」

「いつまでたっても曇り空。何の面白みもないわ」

なぜだろう。
一人ぶつぶつと呟いている彼女の様子を盗み見ているうちに、その様子がちょっぴり面白い様に思えてきた。
だんだん私は答えるべきかと思いなおし始めていた。次何か言ったら答えてやろう。そう思った。そうこうしているうちに、私は目的の物を見つけ出した。

なんだっけ。…そうそう、弁当箱だ。

机の奥深くに突っ込んであったそれをひっぱり出したら、後はもう教室に用は無い。足早に外へと通じる扉へと向かい、教室の外へとでかけた時だった。

「環境を変えれば、勉強がはかどると、思ったんだけどね」

彼女がぽつりとつぶやいた。身体ごと向き直って彼女を見れば、やっぱり眠そうな顔のまま。

そのまま、スライド式のドアを後ろ手に閉め、私は頷いた

「うん。そりゃ、環境を変えただけでは、駄目だろうさ。やる気を出さないと」

「…なるほど」

そこで初めて、彼女は私に気付いたとでもいうように、顔をこちらに向けて、

「あ」その顔に驚きの表情を浮かべた。そして、せかすように私に言う。

「ねぇ。傘もってない?」

「ん。折り畳み傘なら、あるけど。何で?」

「ううん。折り畳みじゃダメ。透明なやつ、ない?」

彼女は首を振ってそう言った。
私はしばらく考えて、答えてやる。

「ビニール傘?それなら、昇降口にあるかもしれんな。でも、何でだ。雨でも降ってきたのか」

「ああ、なーるほど。んじゃ、あたしは一足お先に失礼するね」

「って、おいこらっ」
彼女はあわただしく教室から出て行った。

「一体なんだってんだ?」

薄暗い部屋で、私は一人ごちた。
ふと、見上げた視界の端。窓の向こうにその答えはあった。

雪が降っていたのだ。一面、綿ぼこりのような雪がひらひらと舞っていた。

そして、校庭に彼女の姿があった。雪と同じようにひらひらと傘を回して、その度に透明な傘が冬で彩られていくのだった。
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# by hoba-rhapsody | 2010-02-28 23:49 | SS格納庫

夜に思いを。

肌寒い、1月の夜だった。旅立ちには良い日和とは言えないが、夜行列車での道中はきっと暖かいだろう。だから、いつだって旅立ちにはいい日和なのだ。
特に、恋人と別れ、遠く離れた地へ向かう彼女にとっては、おそらく。

そんな事をつらつらと考えながら、彼は自宅のアパートの一室で一人、酒を嗜んでいた。

すると、彼の妹が駆け込んできた。そして、
「ねぇ本当にいいの?彼女、行っちゃうよ?」
そう言った。

おそらく何度か、言おうとしたのだろう。家の中で、すれ違うたびに何か言いたそうな顔をしていたのを、彼はわかっていた。

「はて、何の事かな」だから彼はそう言って、ウイスキーのボトルに手を伸ばした。

「言っている意味が、よくわからんよ」ゆっくりと。氷を入れたグラスに酒を注ぎながら、嘘をついた。本当は分かっているのに。妹の言う意味も。理由も。

「ねぇ、本気で言ってるの?」
彼の妹の、怒ったような声にも動じる事は無い。
彼はそっけなく
「さぁな」
と、そう言ってグラスの中身を一口すすった。

香りが広がって、それから強い刺激が口内に伝わる。度数37%のブラックニッカ。ストレートで飲めるほど、酒にはまだ慣れてはいない。
彼は眉をしかめ、その氷が浮かんだ琥珀色の海を見つめた。

彼が酒を飲み始めたのも、彼女と会ってからだった。
週末に、彼女の家で過ごす。それが、2人の間にあった数少ない定例行事だった。そしてその中にはこっそりと酒を飲む事も含まれていて、その時に飲んだ酒はやはり嗜み程度のものだった。酒で酔うには、互いが忙しすぎた。互いが子供でありすぎた。
最初に飲んだのもブラックニッカだった。量に対する安さで選んだその風味に眉をしかめ、2人して「苦いね、これ」と言って苦笑をし、再び封をして仕舞い込んだ。それからは主に度数の低いチューハイを好んで飲んだものだ。

あれから半年が過ぎた。彼と彼女は今や別々の道を歩もうとしている。
そして半年ぶりに飲んだ琥珀色のアルコールは今もなお、本来の風味を嗜むには早すぎた。

「……もしかしたら」
妹が言った。
「もう二度と、会えないかも知れないんだよ」
「あぁ」
そう言って妹に、目を向ける。泣きそうな顔をしていた。
「知ってる」
「ならどうして」
そう言う妹に、彼は返す言葉が見当たらない。

彼の妹は彼女と同級生であり、無二の親友と言っていいほど仲が良かった。彼と付き合っている事を知った妹は最初は驚いたが、後に笑って、こう言ったものであった。
いわく、「お似合いだよ。性格がよく似ているもの。二人とも」

その妹が、今目の前で、付きつけられたどうにもならない現実に戸惑っているのを、彼は知っていた。彼は恋人を失うが、彼の妹は親友と疎遠になる。
互いに接点がなければ、時間が関係を薄めていく。それは間違いない。
妹の視線を受けとめながら、彼のその手は氷の入ったグラスを揺すっていた。

「こんな喧嘩別れ見たいな形で、別れてもいいの?ひょっとしたら、待ってるかもしれないよ。その…あんたが、引きとめてくれるのを」
「まさか」
それはない、と首を振った。「あいつは、そういう奴じゃない」

そこまでわかっているならなんで付き合おうという努力をしないのよ、と妹はため息をついて、「そう。…どうしても、行く気は無いのね」と深刻な声で呟いた。

彼は、妹に対して、お前が会いに行けばいいとは言えなかった。たとえ会ったとしても、彼抜きでは気まずい空気が流れるだろう。

「……」

だから彼は、無言でいることしかできなかった。
泣くのは性に合わなかった。泣かれるのも、性に合わなかった。
人は会うべくして会い、別れるべくして別れるのだ。
去る者は追わず。それが彼のモットーだった。

だが一方で彼は、我ながら馬鹿らしい思いに囚われているものだと思っていた。
思っていながら、彼女に会いにはいけなかった。行けば、自分と言う形がぐずぐずに崩れてしまう。そう考えていたのだ。

グラスを揺らす。いつのまにか、その体積は氷が溶けて最初注いだ量の2倍近くに嵩増ししていた。そろそろ飲み頃か。

そう思っていると、妹が驚くべき提案をしてきた。
「あたしにも、頂戴」
そう、言った。

咎めるような視線を向けると、
「いいじゃない。あいつも未成年だけどこっそり飲んでたんでしょ?なら、あいつの親友のあたしが飲んで何が悪いってのさ」
と無茶を言って、戸棚からグラスを取り出し、彼へ差し出した。

「…ちょっとだけだぞ」彼は呆れた声でそう言って、席から腰を上げ、渋々グラスを受け取ると台所へ向かう。グラスに氷をいれて、水と酒をそこに注ぐ。

水と酒で割って、氷を入れる。彼の知る限り、一番酔いにくい飲み方だ。

水を注ぐと、氷が音を立てて罅が入った。酒を注ぐと、水が濁って薄い黄色に染まった。
まるで人間の心みたいだ、と彼は思った。脆くて、移り気。

それを手に部屋に戻ると、何も言わずに妹の目の前に差し出した。

「乾杯」
とグラスを受け取った妹が言った。
「何に?」
彼は思わず聞き返す。
「そうね…」
しばらく思考して、妹は言った。
「兄貴の失恋と、親友の新たな船出に、かな?」
「なるほど」
頷いた。どちらも間違いじゃない、と思ったからだ。
彼は失った。彼女は旅立った。そのどちらも、違いない。

2人は、無言のまま、どちらともなく壁に掛けられた時計に目を向けていた。

時計の針は、彼女が出立する時刻を指していた。妹もそれを知っていたのだ。
そうして、静かにグラスを合わせた。

「「乾杯」」

硝子の硬質な音、氷の揺れる音だけが部屋に満ちる。

そうやって、別れの夜は静かに更けていった。
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# by hoba-rhapsody | 2010-01-25 03:05 | SS格納庫

前書き。

ここにお出でになられる方はきっと既知の方々が大半でしょうが一応簡単に自己紹介をさせていただきましょう。

~~ いらっしゃいませ、こんばんは。当ブログの管理人の穂葉と申します。
このブログは、穂葉の「小説もどき格納庫 兼 小説もどきこっそり公開所」となっております。

まずはじめに、荒らしや中傷他、人の迷惑になるような行為はご遠慮ください。当方、何より苦手としております。なお、管理上の都合により、試験的にコメントには制限をもうけさせていただきました。
エキサイトブログ ログインユーザーのみコメントが可能となっている…はずです。
そして内容に興味が持てなかったお客様、お帰りはあちらとなっております…。

…さて、このブログを立ち上げた理由は、ぶっちゃけていえば「最近、メインのブログが生存報告ぐらいの役割しか果たしてないなぁ…」と思ったからです。
それで、せっかくだから目的をしっかり定めた専用のブログを作ろうと思いまして。

以前から、ごく偶に作った小説もどきをブログにこっそり記事として更新したりしてきましたが、どうせなら小説もどきは小説もどきで独立させてやろうと思い、作ってみた次第です。

何分、文章力にムラがあり、また私自身のきまぐれが原動力となって生まれる作品群なのでジャンルもばらばらだったり偏っていたりと無軌道な有様になりそうですが…
こちらもそう多くの事は期待しませんので、まぁ…生温かい目で見守っていただければ、いいかなと。
そう考える次第です。

とりあえず偉大な先人たるご近所さん同様に月1更新を目標に据えてみるとしましょうか。

さてさて、前途やいかに…。   ~~
…というわけで、無軌道な小説(こっそり)公開ブログ、始動します!
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# by hoba-rhapsody | 2010-01-16 23:09 | 前書き(注意書き)